ここで生活するということ
この場所について、亡き国王は
「つまりは、時間と空間を提供するのです。
そこでなにがやれるか、目的がはっきりすれば
手段もはっきりする」
と言った。
私は、生きていた国王に会ったことがない。
話には聞いていたが、なぜか会いに行かなかった。
ここには、昔の彼を知っていた人がたくさんいて、
農場の名を告げると、
「あぁ、あそこだっぺ」
とみんな反応する。
大きな人、というのはやはり評価が分かれるもので、
よく言う人もいれば、悪く言う人もいるし、
どちらの面も言う人もいる。
つかみ所がないから、人の評価が分かれるのだろう。
私は、そんな男が作り始めた農場に流れ着いた。
まだ、なにも始めていない。
それどころか、昔のだらけた生活を引きずりそうになっている。
亡き国王が私たちに「時間と空間」を残してくれたのだ。
ここが、今の私の生きている場所だ。